目に見えないが確実に、また徐々に森が変化してきている。地域に依っては本来の森林土壌に生息する多くの土中菌類が死滅に至っている。その進行状況はかなり重篤であると考えられる。
原因は中国から飛来する重金属類や酸化物である。特に冬期間に黄砂とと共に日本に飛来する危険物質は森林土壌中に深く(冬季は60mに達し、夏季は60cm)まで浸透し樹木の根や地下水にまで影響を与えていると思われる。
さらに、寒の終り以降、樹木は春の成長準備を始めため新根を出すころであり、根数の減少や根が細く脆弱になり、根の広がりや土中深部に至る直根を直撃していると考えられる。
根が傷んでいても蓄えられた養分により春先には新芽が吹き枝葉が成長するが樹木の根部と地上部のバランスが崩れ頭でっかちで樹体を支えることが出来ない状況に至っている。さらに、年々蓄積された危険物質によりバランスを欠いた樹木の中には病虫害に弱いものが出始め、土砂崩れやナラ枯れ病、松くい虫被害につながり森林生態系そのものを破壊しはじめているのではと考察する。
病んでいる森林の診断は、河川の生態系最上部に位置する水中昆虫や魚類の減少や生息数の確認で判断できる。レベルⅠは魚類の種の変化。レベルⅡは魚類の減少。レベルⅢは水中昆虫と魚影が極端に減少。レベルⅣは魚類を含む水中生物が確認出来ないことである。中国、韓国ではレベルⅣの河川が極端に増加していると思われる。
我国の森林の再生は、中国が環境への取組みを行うことであるが当分は不可能といえる。そこで、自国においてブナ、ミズナラ、ケヤキ、クリ、トチノキ、コナラ、クヌギ、ヤマサクラ等の樹種転換に依り山林の腐葉土の拡大による菌根菌の増加を図り森林生態系の改善が必要である。
この山間部から供給される水は水路を通じ田や畑を潤し、海に至っては海藻や海洋生物に多大な恩恵と影響を与えている。山林の衰弱は土砂崩れ、洪水による立木被害、貴重生物や植物の絶滅に繋がっている。
最大の課題は、人間と森の係わりにある。俗に、自然は自然のままといわれるが国内において人間が係わってこなかった森林は無い。原始林でも何らかの形で人は手を入れて来た。人間と自然(山林)は縄文時代から係わることで維持し循環されてきている。
植物生態学や動物生態学に期待したい。