カナダの自然は1万5千年と若い自然である。それまでは、氷河が全体を覆っていた。寒冷な気候により単調な生物相の理由といわれる。その氷河の厚さはハドソン湾で4,000mに達していた。このため、地球全体で海面の低下がおこり浅い海は陸地になった。この頃ベーリング海峡は陸地化しベーリング陸橋をつくっていた。また、シベリアチュコート半島からアラスカユーコンの太平洋地域には日本近海からの黒潮が流れ氷河が発達しなかった。このことで、北米大陸とユーラシア大陸は細長い回廊で陸続きになった。
この結果、生物は盛んに行き来しバイソン、マンモス、シカや古代インディアンが北米大陸に移動した。また、北米大陸からはウマがユーラシア大陸に渡った。
このベーリング陸橋では気候、土壌、植生、動物群集等のまとまる自然がつくるバイオームが形成された。すなわち、気候的クライマックス(極相)景観の自然が広がっていった。太平洋沿岸針葉樹林バイオームは温帯多雨林地域で温暖で湿潤なことから高さが80mに達するダグラスモミなどにより人や動物が最も住みやすい地域となった。海岸山脈西側斜面は世界でも有数の多雪地帯でありミヤマツガ、カスケードモミ樹林やトガサワラ、ツガ、アメリカネズコ、シトカトウヒ林が形成された。このあたりの気候は富山や金沢なみであるが夏は平均17度と根室より涼しい。豊富な降水量は土中の栄養塩基類を流す溶脱がおきることで土壌は養分の乏しい痩せた酸性土壌になる。
この様なことから日本に北海道大学に1本、京都大学に1本といわれるカナダメープルが北陸に適していると思われる。ただし、キクイムシを考慮し北斜面の麓とか山間部奥地に植林場所を探す必要がある。
(参考文献)Newton Books カナダ北のエコロジー 小島 覚