加賀市山中温泉地内に「斧いらずの森」がある。一ヵ所は九谷焼の発祥地で知られる九谷町である。ここには古く金山があったことから人の出入りを禁じるため「斧いらずの森」としたとのいい伝えが残っている。森の主要樹木はケヤキ、トチノキ、ブナノキの落葉広葉樹に常緑樹のヤブツバキが山裾に混生している。
本当の理由は急傾斜地の「斧いらずの森」の下に集落があることから雪崩や土砂崩れから人々を守るため。また森からの湧水確保を通年おこなうためにあると考えられる。古くは九谷焼を焼くため森林の伐採が進み、裸地が出現し土砂崩れがあったと想定される。そこで、村を移転し、村の周辺部山林を斧いらずの森としたと思われる。
山中温泉の奥地に大土町の「斧いらずの森」古い時代は九谷焼の石の採掘や樹木の切り出しでニ千人の人達が住いしたといわれている。そのため、村の中心部には芝居小屋がかけられていたそうである。
そのさらに奥地4km入った大日山の水源近くには四の原村があり分校に先生が通ったと言われている。当然のごとく九谷焼の鉱石と窯焼きの燃料確保のため殆どの山の木は切られたと思われる。ある時、大きな雪崩に村が呑み込まれ死人がでたと古老はいう。そこで、村の裏山を「斧いらずの森」にし大切に守ったことでそれ以後は災害にあうことはなかったそうである。今日、急傾斜地を登り山に入るとケヤキの巨木林が山の中腹から尾根まで隙間なく生育している。なお、尾根筋は大きなブナ林となっている。